Friday, June 12, 2009

キューバの日記⑥

~ハバナへの戻り~
 外国人は外国人用のバスを使用することを国から義務付けられているが、旅の途中で「トラック」という格安の手段があることを知った。(トラックは乗る時にパスポートをチェックされない) これであれば1000円の旅が30円という目が飛び出るような値段におさえられる。難点は、多くのトラックが早朝4時~6時に出発するということ。トラックとトラックドライバーの調子によって出るか出ないかその日の朝に決まるということ。トラックの荷台に50人ほどトコロテンのように押し詰められ、ペチャンコになってしまうこと。そしてスリや泥棒が多い事、などである。 実際乗ってみると、なんとキューバ人ですら自分のバッグをわが子を守るように抱きしめている。そして、ぼくも彼らを見真似、ザックを足に絡ませ、手荷物は常に腹に抱え、隅に素早く身を沈め、忍者のように気配を消しながら旅をしていた。こんな状況で4~5日旅をしていると、かなりの気力と体力を消耗する。さらに50人近くひしめく乗客の体温で、空気が歪むほど気温が上昇する。まるでこれから牢屋にでもおくられるような、鬱屈とした気分になる。
 トラックが出なかった時は、来たときと同じように列車も使った。前にも書いたように、列車の旅では切符を購入するのが至難の業だ。駅の切符売り場へと足を運ぶと、長蛇の列がうねり駅の外までゆうに飛び出している。恐る恐る、みんなどれくらい待ってるのかと聞くと、「3時間」と力なく答えるのである。どうにかならないものかと一人の係員に聞いてみると、外国人はそこのカウンターで別に登録して買うんだ、と特別カウンターのようなところへと連れていかれる。しかしここでもカウンターのおばちゃんはどうやらお昼ご飯を食べに行ってしまったようで、ゆっくり2時間待たされる。そして戻ってくるなり他の職員と世間話をしながらタバコを一本くゆらせ、気分が整いしだい作業開始という調子なのだ。この国では、ほぼ全職が国の職員である為、サービスなどという言葉は存在しない。そしてそれに国民も慣らされてきたのか、みな恐ろしいほど辛抱強い。文句を言いつつも、時がくるまで岩のようにじっと、頑強に待つのだ。
 キューバではキューバ人のような行動をとろうとすると、とにかく「待つ」必要がある。ぼくが今まで生活してきた環境ではTime is moneyとよくいわれてきたが、キューバでは特にTimeはMoneyではないのである。

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