Wednesday, June 3, 2009

キューバの日記⑤

~オルランドさんの話~

チェ・ゲバラ縁の町、サンタ・クララ。ここで泊まった宿のオーナー、オルランドさんと親しくなり、こんな過去の貴重な話を聞かせてもらった。

来月娘さんの結婚をひかえている。娘さんとオルランドさん。

「貧乏にも色々あるけど、お金が意味をもたない、物のない貧しい社会っていうのがあるんだ。ジュン、あの時ほどキューバにとっても、国民にとっても辛い時期はなかったよ。 革命戦争が終ってから、キューバはソビエトに頼って30年間生きてきてしまった。ソビエトに砂糖やニッケルを売って、彼らから石油・ガソリン・車・食べ物、ありとあらゆるものをもらっていた。だけど1991年にソビエトが崩壊してからはそれも全て届かなくなってしまった。石油がなくなるってことはどうなるかわかるかい?ぼくたちは国として石油もとれないし何も生産していなかった。まずガスと電気をとめられてしまったよ。そして政府は1日5時間だけぼくたちに電気をまわしてくれると約束した。でもその電気もいつくるかわからないんだ。昼かもしれないし、夜かもしれない。だからみんないつも電源をつけておいた。そうするといつ電気がくるかわかるからね。時には朝の3時に電気が急につくんだ。その時は家族全員起きて洗濯をしたり、アイロンをかけたり、電気ジャーで野菜を煮たりして、電気で必要なことはその時にやったよ。でもね、電気がないのはまだなんとかなる。ないと大変なのは食べ物だよ。食べ物がないのは今の世の中ではなかなか想像できないかもしれないだろうけど。みんなお金はあるのに買うものがない。1日に1回、なければ2日に1回、配給のベルが公園で鳴るんだ。そうするとみんなカルネ(身分証明書)をもってすごい列に並んだよ。夜中の12時1時でも。1時間、2時間並んで1人ハンバーガー1個しかもらえない。あの時はいつも腹が減って。今なんか、いつでもハンバーガーもピザも買える。種類は少ないかもしれないけど、ものを欲しい時に買えるうれしさっていうのはこの時の経験があったから痛いほどよくわかるんだ。」

ぼくはオルランドさんたちの当時の生活を想像しながら、彼の言葉を反芻していた。人の過去の辛い体験談には、多くの場合、輝かしい成功話にはない人生の含蓄と示唆に溢れている

つづく

No comments: