ドクターラングとミセスラングの家は、ぼくが小学校、中学校のころと何もかわっていない。子供の頃にかいだ匂いもそのままだ。まるで、時計の時間があの頃のままのような、そんな静かな不思議があった。
家の玄関にて。
アベニューというレストランで朝食をとった。ここは二人の行きつけの店。地元の客であふれていた。
アメリカにいると朝はスクランブルエッグやトーストなどヘビーなものが多い。ぼくはミセスラングと一緒に、懐かしのオートミールを注文。朝から昔話や、今のアメリカについて話した。
クリントイーストウッドのように渋いドクターラング。頭もよくて、やさしくて、運動神経もいい(昔はマラソンをやっていた)。最近は右足が痛むようで、びっこを引いているが、週に三回YMCAで水泳をして体を動かしている。
二人にはジューリーという娘さんがいて、今は結婚していてロサンゼルスに住んでいる。ジューリーには二人の子供がいて、上は 中学生、下が小学校低学年。ドクターラング達は年に2、3回ロスの方に遊びに行くのが大の楽しみだ。ただ年をとってきたのでいつまで行けるかなあ、とつぶやいていた。
この席で毎週木曜日に、夜中まで英語や社会、歴史の勉強を教えてくれた。手を抜くと、すぐに叱られ、ちゃんとやるとご褒美にカルピスのジュースをくれた。
ミセスラングは昔から美術品やガラクタを地下室とピアノの部屋に溜め込むのが癖で、今でも友人から面白い壁紙をもらったといっては家に持ってくる。ドクターラングが「本当にそれ使うの?」と聞くと、「Shush! (おだまり!)」とピシャリ。このやり取りも20年前から変わっていない。
この木も昔からここにあった。
つづく
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